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失敗事例9分2026年4月28日

表明保証とR&W保険:M&A契約のリスクを売り手・買い手で適切に分担する仕組み

表明保証とR&W保険:M&A契約のリスクを売り手・買い手で適切に分担する仕組み

最終契約書(SPA)に含まれる「表明保証条項」は、売り手にとっての最大のリスク要因の一つです。表明保証の意味・違反時の損害賠償リスク・近年活用が広がる「R&W保険」の仕組みまで、売り手が知っておくべき重要論点を整理します。

表明保証:売り手が買い手に「保証」する重要条項

最終契約書(SPA)の中で、売り手にとって最も重要かつリスクの大きい条項が「表明保証」です。これは売り手が買い手に対して、対象会社の状態について「こういう状態であることを保証します」と表明する条項です。

表明保証の対象は、財務・税務・労務・契約関係・知的財産・許認可・訴訟・環境問題など、対象会社のあらゆる側面に及びます。例:「過去3期分の決算書は会計基準に則って作成されており、重大な虚偽はない」「未払い残業代は存在しない」「対象会社の取引は法令に違反していない」など。

表明保証に違反する事実がM&A成約後に発覚すると、売り手が買い手に損害賠償を支払うことになります。中小M&Aでも、表明保証違反による賠償額が数千万円〜数億円規模になるケースは珍しくありません。

表明保証違反のリスク:売り手が抱える「3年〜5年の不安」

表明保証の有効期間(請求可能期間)は契約により異なりますが、一般的なものは1〜3年、税務・労務関連は3〜5年、環境問題等は無期限とされる場合もあります。

M&A対価を全額受け取った後でも、この期間内に違反事実が発覚すると、賠償請求を受ける可能性があります。例えば、成約2年後に過去の未払い残業代の集団訴訟が起きた場合、売り手はその弁護士費用・解決金等を負担することになります。

中小オーナー経営者の中には、「M&A対価で人生設計を立てた後に、突然賠償請求を受けて家計が破綻する」という最悪のシナリオを想像する方も少なくありません。

「例外事項」の明記:売り手が必ずすべき交渉

表明保証を緩和する最も基本的な方法は、「例外事項(ディスクロージャー・スケジュール)」として、保証できない事項を契約書に明記することです。

例:「過去3期分の決算書には、◯◯の項目について税務調査の指摘可能性があるが、これは表明保証の対象外とする」「未払い残業代の可能性として、◯◯店舗の従業員◯名分の◯円程度のリスクを認識している」など。

事前に開示してしまえば、それは表明保証違反にはなりません。むしろ「隠していなかった」という証拠になります。事前準備の段階で、自社のリスクをすべて洗い出し、契約書に「例外事項」として明記することが、売り手の最大の自衛策です。

R&W保険:表明保証リスクを保険で移転する仕組み

近年、中堅・中小M&Aでも活用が広がっているのが「R&W保険」(Representations & Warranties Insurance、表明保証保険)です。

仕組み:表明保証違反が発覚した際の損害賠償を、保険会社が買い手・売り手に代わって支払う保険商品。保険料は売却対価の0.5%〜2%程度。

【売り手のメリット】保険でリスクを移転できるため、M&A成約後の賠償リスクから解放され、対価をフルに使えるようになる。

【買い手のメリット】中小オーナーの賠償資力不足を懸念せずに、保険で確実に補償を受けられる。

中小M&Aでは保険料が一定額以上のディールでないと付保が難しいケースもありますが、買い手FAの中には R&W保険の付保を交渉してくれる専門家もいます。

まとめ:表明保証は「準備と保険」で守る

表明保証はM&A契約の最重要論点であり、売り手の「成約後の人生の安定」を左右します。事前のリスク洗い出し・契約書への例外事項明記・R&W保険の活用、この3点を組み合わせることで、適切にリスクを管理できます。

M&Aプロフェッショナルズに掲載されている買い手FAは、表明保証の交渉実務に精通した専門家です。費用は一切かかりませんので、自社の表明保証リスクをどう設計するか、お気軽にご相談ください。

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