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基礎知識9分2026年5月23日

「2025年問題」と中小企業の後継者不在:黒字廃業を避けるための選択肢を整理する

「2025年問題」と中小企業の後継者不在:黒字廃業を避けるための選択肢を整理する

「2025年問題」とは、中小企業経営者の高齢化と後継者不在が一斉に表面化する問題です。経済産業省・中小企業庁の試算では、多くの黒字企業が後継者不在を理由に廃業へ至る可能性が指摘されています。本記事では、2025年問題の全体像、後継者不在が深刻化した背景、そして廃業を避けるために経営者がとれる選択肢を、中立的な視点で整理します。

「2025年問題」とは:何が起きようとしているのか

「2025年問題」とは、中小企業の経営者の高齢化がピークを迎え、後継者不在の問題が一斉に表面化することを指します。いわゆる団塊世代の経営者が後期高齢者にあたる年齢に達し、引退の時期を迎える企業が短期間に集中するためです。

経済産業省・中小企業庁の試算(2017年公表)では、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人にのぼり、そのうち約半数の約127万人が後継者未定とされています。さらに、この状態を放置した場合、累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとも指摘されました。いずれも一定の前提を置いた試算ですが、問題の規模感を示す数字として広く引用されています。

ここで重要なのは、これが業績悪化による倒産の話ではないという点です。問題の核心は、事業として黒字で続けられるにもかかわらず、引き継ぐ人がいないために会社を畳む「黒字廃業」が大量に発生しかねない、というところにあります。

なぜ後継者不在がここまで深刻化したのか

かつて中小企業の事業承継は、経営者の子どもなど親族が引き継ぐ「親族内承継」が当たり前でした。しかし近年は、子世代がすでに別のキャリアを築いている、家業を継ぐことへの価値観が変化している、少子化で承継候補そのものが少ない、といった理由から、親族内で後継者を確保できる企業が大きく減っています。

また、中小企業の経営では金融機関からの借入に経営者個人が連帯保証を負っているケースが多く、この個人保証の重さが、家族や社内の人材に承継を勧めにくくする一因になっています。事業の先行きへの不安も加わり、「継いでほしいと言い出せない」状況が生まれやすいのです。

結果として、親族にも社内にも後継者を見いだせない企業が増え、第三者への承継や廃業を現実的に検討せざるを得ない経営者が増加しています。

後継者不在の企業がとれる4つの選択肢

後継者不在に直面したとき、経営者がとりうる選択肢は大きく4つに整理できます。

【1】親族内承継:子どもや親族に引き継ぐ。理念や関係性を引き継ぎやすい一方、候補者の意思と適性、個人保証の引き継ぎが課題になります。

【2】役員・従業員承継(MBO/EBO):社内の役員や従業員が株式を取得して引き継ぐ。事業への理解は深いものの、株式の買い取り資金の確保が壁になりやすい方法です。

【3】第三者承継(M&A):社外の企業や個人へ事業や株式を譲渡する。後継者がいなくても事業を継続でき、創業者は対価を得られます。

【4】廃業・清算:事業をたたみ、資産を処分して清算する。最終手段ではありますが、黒字企業にとっては価値を失う選択になりがちです。

どれが最適かは、事業の状態、経営者の希望、従業員や取引先への影響によって変わります。親族内・社内承継と第三者承継の比較は「親族内承継 vs 第三者承継(M&A):どちらが自社に向いているか」、承継とM&Aの意思決定の枠組みは「事業承継 vs M&A:後継者問題に直面した経営者の意思決定フレームワーク」もあわせてご覧ください。

「黒字廃業」を避ける:第三者承継(M&A)という選択肢

黒字でありながら廃業を選ぶと、従業員は職を失い、取引先は仕入れや販売先を失い、長年培ってきた技術やノウハウも途絶えてしまいます。設備や在庫は処分価格でしか評価されないことが多く、清算には費用もかかるため、経営者の手元に残る金額も限られがちです。

一方、第三者承継(M&A)であれば、買い手の傘下で事業と雇用を継続でき、取引先との関係も引き継がれます。経営者は株式や事業の対価を受け取ることができ、その後の生活設計やセカンドキャリアの原資にもなります。廃業とM&Aの比較は「廃業 vs M&A:『最後の選択』の前に必ず検討すべき4つのポイント」、売却後の手取りやキャリアは「会社売却後の創業者利益:手取り・税金とセカンドキャリアの選択肢」で詳しく整理しています。

ただし、M&Aが常に最善というわけではありません。事業の規模や収益性、買い手が見つかるかどうかによって現実的な選択肢は変わります。大切なのは、廃業を前提に考える前に、第三者承継という選択肢を一度きちんと検討してみることです。

動き出すタイミングと準備

事業承継やM&Aは、経営が安定しているうちに早く動き出すほど選択肢が広がります。業績が落ちてからでは買い手が限られ、希望する条件での承継が難しくなるためです。会社を売る判断のタイミングについては「会社売却のベストタイミング:経営者が判断すべき5つのサイン」も参考になります。

準備としては、決算書や試算表など財務情報の整備に加え、経営が特定の人に依存しすぎない体制づくり(属人性の低減)、契約や許認可の整理が挙げられます。買い手による調査に備えた準備は「デューデリジェンス(DD)への準備:売り手が事前に整えておくべき5つの領域」で具体的に解説しています。

M&Aによる承継は、相談から成約まで一般的に6ヶ月から1年半程度かかります。「まだ早い」と感じる段階から情報収集を始めておくことが、後悔のない承継につながります。

まとめ:黒字廃業の前に、第三者承継という選択肢を

2025年問題の本質は、業績不振ではなく後継者不在による黒字廃業のリスクが一斉に高まることにあります。後継者不在に直面したときの選択肢は、親族内承継・役員従業員承継・第三者承継(M&A)・廃業の4つに整理でき、それぞれに向き不向きがあります。

重要なのは、廃業を前提に考える前に、雇用や取引先、培ってきた価値を残せる第三者承継の可能性を一度検討してみることです。そして、選択肢が広いうちに早めに準備を始めることが、条件面でも有利に働きます。

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