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基礎知識10分2026年4月13日

2段階イグジット:マジョリティ売却+セカンダリ売却で実現する段階的M&A戦略

2段階イグジット:マジョリティ売却+セカンダリ売却で実現する段階的M&A戦略

最初にマジョリティ株式を売却して経営権を譲り、数年後に残り株式を完全売却する「2段階イグジット」。買い手は事業会社・PEファンド・経営陣(MBO)・IPO等、多様な選択肢があります。経営者にとってのメリット・リスク・典型的なパターンを整理します。

2段階イグジットとは:段階的に経営権を移転する仕組み

「2段階イグジット」とは、最初に対象会社のマジョリティ株式(過半数)を売却し、数年後に残り株式を完全売却するM&Aスキームの総称です。一度に完全売却するのではなく、段階的に経営権と株式を移転していくことで、買い手・売り手双方のリスクを抑えながらディールを進められます。

「2段階イグジット」と聞くとPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)を買い手とするケースを思い浮かべる方が多いですが、実は買い手のタイプは多様です。事業会社・PEファンド・経営陣(MBO)・IPOによる市場売却など、ケースに応じて様々な相手が想定されます。

本記事では、2段階イグジットの典型的な4つのパターンと、それぞれの特徴・経営者にとっての意味合いを整理します。

2段階イグジットの4つの典型パターン

【パターンA】事業会社への段階的売却

同業他社・異業種参入企業・取引先企業などにマジョリティ株式(51〜80%)を売却し、数年間の事業統合・シナジー検証を経て、残り株式を完全買収(フルバイアウト)してもらう形。提携関係から始めて段階的に統合を進めるケースで多用される。

【パターンB】PEファンドへの売却+セカンダリイグジット

PEファンドにマジョリティを売却し、5〜7年の保有期間でPEファンドが企業価値を高めた後、別の事業会社・PEファンド・IPOによってセカンダリ売却。元経営者の残り株式もこのタイミングで売却される。

【パターンC】MBO(マネジメント・バイアウト)

経営陣・幹部社員に段階的に株式を譲渡し、創業オーナーが計画的にエグジット。1段階目で過半数を経営陣に譲渡、数年後に残り株式を完全譲渡する形が一般的。

【パターンD】IPO(上場)による段階的売却

株式公開時にオーナー保有株の一部を売出し、ロックアップ期間(通常6ヶ月〜2年)終了後に追加売却して完全イグジット。創業者の段階的引退と公開市場での換金性確保を両立できる。

1段階目(マジョリティ売却)の特徴

【売却比率】マジョリティ売却の典型比率は51〜80%。残り20〜49%は元経営者・経営陣・親族が保有を続ける。

【経営権の移譲】株式の過半数が買い手側に移るため、経営権は実質的に買い手に移譲される。ただし、元経営者は取締役・代表取締役・顧問として一定期間継続関与するケースが多い。

【ガバナンス】取締役会に買い手側の代表者が入り、経営の重要意思決定は買い手と協議の上で進める。買い手の関与度合いは、事業会社の場合は中程度、PEファンドの場合は深い、MBOの場合は元経営者の影響力が残るなど、相手によって異なる。

【統合度合い】事業会社が買い手の場合、1段階目の段階で経営統合(PMI)を本格的に開始するケースもあれば、独立性を維持して提携関係を続けるケースもある。

2段階目(セカンダリイグジット)の設計

【典型的なタイミング】1段階目から3〜7年後が標準的。事業会社による段階的買収では3〜5年、PEファンド経由では5〜7年が目安。

【セカンダリの売却先】(A)事業会社による完全買収、(B)別のPEファンド・事業会社へのトレードセール、(C)IPO(株式公開)、(D)経営陣による買い戻し(MBO)等、多様な選択肢がある。

【元経営者の対価】元経営者が保有する残り株式は、1段階目より高い価格倍率で売却できることが多い。1段階目から2段階目までに企業価値が成長していれば、残り株式の対価も上振れる。

【タイミング・売却先の決定権】契約書で「セカンダリのタイミング・売却先について元経営者の同意権」を明記しておくと、不本意な売却を防げる。買い手の意向が強い場合、元経営者の意向が反映されないリスクも事前に検討が必要。

経営者にとってのメリット

【メリット1】1段階目で大きな現金化

マジョリティ売却で売却対価の大半を現金化。創業者利益を確保しつつ、経営継続も可能。

【メリット2】「成長による上振れ」の獲得機会

1段階目から2段階目までの期間に企業価値が上がれば、残り株式の売却対価も大幅に上昇。買い手の経営資源を活用して企業価値を高められる構造。

【メリット3】経営のソフトランディング

いきなり完全引退するのではなく、買い手の傘下で経営を続けることで、引継ぎ・PMIをスムーズに進められる。

【メリット4】キーパーソン定着の促進

元経営者・経営幹部が一定期間残ることで、従業員・取引先からの信頼が維持され、組織の動揺が最小化される。

経営者にとってのリスク・デメリット

【リスク1】経営の自由度低下

買い手の取締役派遣により、自社の経営判断に買い手の承認が必要になる。意思決定スピードが下がる可能性。

【リスク2】経営方針の不一致

買い手の経営方針と元経営者の経営哲学が衝突するケース。特にPEファンドが買い手の場合、短期的な収益化を優先される可能性。

【リスク3】2段階目イグジットの不確実性

3〜7年後の市場環境次第で、想定した売却対価が獲得できないリスク。経済情勢・業界再編・買い手企業の戦略変更等の影響を受ける。

【リスク4】セカンダリ先の不本意

1段階目の買い手が選ぶセカンダリ先が、元経営者の意向と異なる可能性。契約書での同意権明記が重要。

どんな企業に向くか・向かないか

向く企業

①成長余地が大きく、買い手の経営資源で企業価値を高められる企業、②オーナー経営者の高齢化が進むが、すぐに完全引退したくない企業、③経営陣・幹部社員が育っており、段階的なバトンタッチが現実的な企業、④IPO志向だが、すぐの上場準備が難しい中堅企業。

向かない企業

①売り手が完全引退を最優先する場合(一括売却のほうがシンプル)、②小規模企業(年商10億円未満)でPEファンドや段階的買収の対象となりにくいケース、③経営方針を一切変えたくない経営者:買い手の関与を受け入れる必要があるため不向き。

まとめ:「一括売却」と「段階的売却」の選択

2段階イグジットは、一括売却(クリーンエグジット)と比較して、複雑な構造を持つ代わりに、企業の成長性を売却対価に反映させたり、経営のソフトランディングを実現できる柔軟なM&A手法です。買い手のタイプ(事業会社・PEファンド・MBO・IPO)によって、メリット・リスクの構造は大きく異なります。

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