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基礎知識10分2026年5月4日

株式譲渡と事業譲渡の違い:売り手が選ぶべきM&Aスキームの判断軸

株式譲渡と事業譲渡の違い:売り手が選ぶべきM&Aスキームの判断軸

M&Aの売却スキームには「株式譲渡」と「事業譲渡」の2種類があります。手取り額・税負担・引継ぎ範囲が大きく変わるため、自社の状況に合うスキームを早期に判断することが重要です。両者の違いとメリット・デメリット、選び方の判断軸を解説します。

M&Aには2つの基本スキームがある

中小企業のM&Aで使われるスキームは、大きく「株式譲渡」と「事業譲渡」の2種類です。どちらを採用するかは、売り手の手取り額・税負担・買い手の引継ぎ手続き・従業員や取引先への影響が大きく変わる重要な意思決定です。

同じ売却金額であっても、スキームの違いによって最終的な手取り額が数千万円〜数億円単位で変わるケースもあります。M&Aアドバイザーへの初回相談前から、それぞれの基本構造を理解しておくことを強くおすすめします。

株式譲渡:会社の株式を丸ごと売る

株式譲渡は、対象会社の株式をオーナー(個人)が買い手に売却するスキームです。会社の法人格はそのまま維持され、買い手の傘下企業として継続します。許認可・契約関係・従業員雇用などをそのまま引き継げる点が最大のメリットです。

売り手にとっての税負担は、株式譲渡所得として一律約20%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)の分離課税です。フラットな税率で計算しやすく、手取り額の予測が容易です。

一方デメリットとして、過去の簿外債務・税務リスク・訴訟リスクなどを買い手が引き継ぐため、買い手側のDDが厳格になりやすく、契約書の表明保証条項も重くなる傾向があります。

事業譲渡:特定の事業を切り出して売る

事業譲渡は、対象会社の特定事業(資産・契約・従業員等)を選択的に買い手企業に譲渡するスキームです。法人格の売買ではないため、売り手企業は譲渡後も法人として存続します。

買い手にとってのメリットは、不要なリスク(簿外債務・過去訴訟等)を引き継がずに、必要な事業のみを取得できる点です。中小M&Aでは買い手側がこのスキームを希望するケースが少なくありません。

ただし売り手にとっては、譲渡対価は会社(法人)に入るため、オーナー個人の手取りにするには法人税課税後に配当や役員退職金として支払う必要があります。最終的な税負担が約50%超になることもあり、株式譲渡と比較して手取り額が大きく目減りする可能性があります。

スキーム選択の判断軸:5つのチェックポイント

【1】税負担と手取り額

オーナー個人の手取りを優先するなら株式譲渡が原則有利。事業譲渡の場合は退職金枠の活用で実質税負担を抑える工夫が必要。

【2】簿外リスクの有無

過去の労務問題・訴訟・税務調査リスクが大きい会社は、買い手が事業譲渡を希望するケースが増える。

【3】複数事業を持つ会社

1事業だけ売却したい場合は事業譲渡。会社全体を売る場合は株式譲渡。

【4】許認可・契約の重要度

許認可ビジネスや長期契約が事業の柱であれば、株式譲渡のほうが引継ぎがスムーズ。

【5】従業員への影響

株式譲渡は雇用契約を自動承継、事業譲渡は転籍同意が必要。離職リスクの観点で株式譲渡のほうがスムーズ。

まとめ:スキーム判断は早期に専門家へ

株式譲渡と事業譲渡は、最終的な売り手の手取り額・税負担・引継ぎリスクが大きく異なります。M&A検討の早い段階で、自社にとってどちらが有利かを概算試算しておくことが、納得感のあるM&Aの第一歩です。

M&Aプロフェッショナルズに掲載されている買い手FAは、スキーム選択についても無料で相談に乗ってくれます。複数のアドバイザーに相談し、自社にとって最適なスキームを見極めてください。

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