同じM&A会社でも、案件によってスタンスは変わる:契約前に必ず確認したい5つの質問

日本のM&A業界では、同じアドバイザリー会社が「仲介」「買い手FA」「売り手FA」を案件ごとに使い分けるのが一般的です。会社単位ではなく案件単位で、自社にとってのアドバイザーのスタンスを契約前に確認する重要性と、確認すべき5つの質問を解説します。
「会社単位」では判断できないM&Aアドバイザーの実態
M&Aアドバイザーを選ぶ際、多くの経営者は「仲介会社」「FA会社」という会社単位のラベルで判断しがちです。しかし、日本のM&Aアドバイザリー業界の実態は、もっと流動的です。
多くのアドバイザリー会社は、案件によって「仲介」「売り手FA」「買い手FA」のスタンスを使い分けています。大手仲介会社が買い手FA案件を持つこともあれば、独立系FAが仲介的に動くこともあります。「会社のラベル」だけでは、自社のディールでどのように動くかは見えてこないのです。
本記事では、業界の実態を整理した上で、売り手企業の経営者が契約前に必ず確認すべき5つの質問をまとめます。
M&Aアドバイザーの3つのスタンス
【スタンス1】仲介
売り手と買い手の双方とアドバイザリー契約を結び、両者の間に立ってディールをまとめる。両者から成功報酬を受け取る両手取引が一般的。
【スタンス2】売り手FA(Financial Advisor)
売り手側に専属して、売却価格・条件の最大化を支援する。報酬は売り手から受け取る片手取引。
【スタンス3】買い手FA
買い手側に専属して、買収戦略の遂行を支援する。報酬は買い手から受け取る片手取引。M&Aプロフェッショナルズに掲載されているのはこのスタンスのアドバイザー。
それぞれのスタンスで、アドバイザーが代弁する利益・受け取る報酬・取れる行動範囲が異なります。
同じ会社が複数スタンスを取る業界実態
日本のM&Aアドバイザリー会社の多くは、ビジネス上の柔軟性を確保するため、案件ごとにスタンスを使い分けます。なぜなら:①特定の案件で「買い手側企業からの依頼」と「売り手側企業からの依頼」が同時に発生することがある、②会社の主力ビジネスとは別に、関係先の依頼でスタンスを変えることがある、③M&A市場の動向に応じてビジネスポートフォリオを調整する必要がある、ためです。
つまり、ある会社が「うちは仲介専業」と打ち出していても、特定のディールでは買い手FAとして動くこともあれば、「うちはFA専業」と打ち出している会社が、関係性のあるクライアント同士のディールでは仲介に近い役割を担うこともあります。
これは業界の構造的特徴であり、「悪い」というものではありません。むしろ、売り手企業の経営者として認識すべきは「会社単位ではなく案件単位で確認する」必要があるという実務的な事実です。
契約前に必ず確認したい5つの質問
【質問1】「本件で、貴社はどのスタンスで動きますか?」
仲介・買い手FA・売り手FA、どのスタンスでアドバイザリー契約を結ぶのかを明確化する。書面に明記してもらうのが理想。
【質問2】「貴社は本件で買い手側からも報酬を受け取りますか?」
両手取引か片手取引かを明確化する。両手取引の場合、価格交渉での売り手代弁の限界を認識しておく必要がある。
【質問3】「本件と並行して、競合する別案件を抱えていますか?」
同じ業種・規模の他社案件を同時並行で担当している場合、買い手候補が競合することがある。
【質問4】「貴社の過去N年で、買い手FA(または売り手FA)として担当した実績は?」
そのスタンスでの実績数と業種・規模を確認する。実績が極端に少ない場合は、慣れていない可能性。
【質問5】「報酬発生の起点と、契約終了後のテール条項は?」
成約に至らなかった場合の費用負担、契約終了後も成功報酬が発生する期間(テール期間)、対象範囲を確認する。
「買い手FAスタンス」を取れるアドバイザーの見極め方
上記5つの質問への回答から、「自社のディールで、買い手FAスタンスで動いてくれるアドバイザー」を見極めます。【サイン1】「貴社の利益を代弁します」と書面で明示してくれる:曖昧な口頭合意ではなく、契約書に「買い手FAとして売り手企業の利益を代弁する」と明記される。
【サイン2】買い手側からの報酬を受け取らないことを契約で確約
本件において買い手側からの報酬を一切受け取らないことを契約条項として明記する。
【サイン3】買い手選別プロセスへの売り手の関与を尊重
複数の買い手候補を提示し、最終選定権を売り手企業に委ねる姿勢があるか。
「専属アドバイザー」のいる時代へ
大企業や上場企業では、M&A戦略を遂行する際に「自社のための専属アドバイザー(買い手FA・売り手FA)」を起用するのが当たり前です。中小企業のM&Aでも、この「専属アドバイザーを選ぶ」という発想が広がりつつあります。
会社売却は経営者にとって人生最大級の意思決定です。両者の間に立つ仲介者にすべてを委ねる選択肢もあれば、自分の立場を専属的に代弁してくれる専門家と組むという選択肢もあります。重要なのは、契約前に「自社のディールでアドバイザーが取るスタンス」を明確に確認することです。
まとめ:契約前の5つの質問を必ず実施する
M&Aアドバイザー選びは、「会社のブランド」ではなく「自社のディールでのスタンス」で見極める時代になっています。本記事で紹介した5つの質問を契約前に必ず実施し、自社の利益を代弁してくれるアドバイザーかどうかを冷静に判断してください。
M&Aプロフェッショナルズでは、M&A仲介会社・買い手FA・売り手FAを比較し、自社のディールでどのスタンスを取るかを契約前に確認できます。複数のアドバイザーに無料相談し、本記事の5つの質問を投げかけてみてください。
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